エンカウントも実力のうち! 7


「チッ…繋がらねぇ」

コール音が延々続くのに舌打ちし、跡部は携帯を閉じる。
こんな事なら不二の奇行に乗らずに引っ張ってくれば良かったと思うものの意味はない。 あっけにとられたのもあるが、あそこまで必死に誤魔化されてそれを打ち消すのも躊躇われたというだけの話である。
結局は自分が不二に甘かったのがこの現状を作り出した理由なのだ。

「どんな気遣い屋だ、俺は」

自嘲して口を歪める。こうなったら意地でも探し出す、決意も新たに足を踏み出すと、すれ違う相手とぶつかりかけた。悪い、そう声をかけようとして表情が止まる。

「あれ?合流できなかったの?」
「テメ、わざとか…!」

なんとも憎たらしいライバル校のルーキーが食えない笑みを浮かべていた。

「地味な嫌がらせしてんじゃねーよ。不二がテンパっただろうが」
「そこでフォローする甲斐性がないのはいいんだ?」

さっくり痛いところを突いてくるのが腹立たしい。どうも本日遭遇してから今まで妙に喧嘩を売ってくる。
生意気なガキだと思ってはいたが、ここまでくるとなんなんだと言いたくなる。

「おい一年坊主、俺様に文句でもあんのか?」
「別に、なんかむかついただけ」
「いい度胸だ」

不適に睨み合いつつ、跡部は携帯のメモリを呼び出した。
今はコイツに構っている暇はない、手塚にさっさと引き取らせてしまおう。通話ボタンを押して呼び出しを待つこと数秒、数十秒、一分が経過した。

「出ろよ手塚ぁあああああ!」
 
携帯に吠える跡部に越前が思わず目を瞬く。

「え、なに。不二先輩にかけたんじゃなかったの?」
「何回コールしても出ねぇんだよ!テメェもいるからとりあえず手塚にかけてんだろーが!」
「部長、出ないの?」
「つーか、話し中だ。どっかにかけてんじゃねぇのか」

実際には話していなくても、相手もコール中だった場合、繋がることはない。たまにお互いにかけているなんて漫画みたいな話もあるのだが、その場合も今も時間を置いてかけなおす以外に手段はない。
越前は考えるような仕草をした後、真顔で呟いた。

「部長、俺のケータイにかけてるかも」
「お前の携帯はどうした」
「家」
「携帯電話の意味わかってんのかこのガキ!」

跡部の叫びが煩かったので耳をふさぐ越前だった。

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