芽吹いて、咲いて、在るところ 2


早朝の見廻りは当番制だ。
局長であり、特訓メニューの監督を務める土方が含まれることはそうそうない。
さっさと戻りたくて歩を進める矢先、準備中の花屋に行き会った。
なんとなく吸い寄せられた一輪の花。財布を取り出そうとした総司へ、いつもお世話になってるからと貰ってしまう。 好意は有難く受け、浮かれた気分で屯所の門をくぐる。
朝食までの自由時間は隊士の姿もまばらだった。
自主トレをこなす者、部屋で一眠りする者、慣れた朝の空気を感じながら歩く廊下。
目当ての人物は、思ったよりすぐ見つかった。

「総司」

隊服を靡かせるいつもの姿に見惚れつつ、足早に寄って笑みを浮かべる。

「お土産です」

差し出すのは白い薔薇。一度瞬いた土方は、先日の礼と判断したか素直に受け取り視線を落とす。
瞬間、嗅ぐように寄せられた鼻先が逸れ、花弁へ恭しく口付けた。

「わあ、」

そういうのやっちゃうんですか。浮かんだ言葉は声にならない。
次いでむくむくと膨れ上がった感情のほうを音に乗せる。

「そういうのは、僕にしてくれます?」
「花にそんなこと出来るか」

理解するより抱き締める腕が早かった。
自分を包む力と体温に笑いが漏れて、胸元へ擦り寄る。

「ぎゅっとしても壊れない僕で良かったですね」



*白い薔薇「私は貴方に相応しい」

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