芽吹いて、咲いて、在るところ 1
屯所へ戻る途中、見知った花屋の軒先で一輪の花が目に入った。 花束を作る際に間引かれたものであるらしく、ご所望であれば御代は結構と言われ、そのまま受け取る。 道行く人の視線が片手へ注がれる気はしたものの、土方はいつも通り歩みを進めた。 迎える総司が当たり前の如く自室に居たのだが、それを突き詰めても仕方ない。 手の中のものを差し出した。 じっと見つめる瞳が開く。 「土方さん、」 語尾へ含まれた笑い声はすぐに微笑みとなって広がる。 「花言葉知ってます?」 黄色い薔薇のつぼみを受け取って、穏やかな眼差しを向けた。 「知るわけないよね」 首を傾げるより早く決め付けられ――実際に知らないのだが――上機嫌なまま脇をすり抜ける相手を見送る。 ちらり、振り返ってまた笑った。 「土方さんと食べたいから、待ってたんですよ」 ごはん、と続けられる言葉に頷く。 どうやら、教えてもらえそうにはない。 *つぼみの黄薔薇「初恋」 |