sick! sick! sick! 3


汗を掻いただろうから着替えろとパジャマを押し付けられ、のろのろとボタンを外しながら状況を整理する。
起きたら倉間がいた、昨日と服が違った、つまりはそれを取りに家へ戻った。
ちょっと出てくるイコール、用意をしてくるということだった。即ち、倉間は昨日ここに泊まった。
新たに袖を通して硬直する。それでは、夜、夢だと思ったあの出来事は。
頭を抱えたのは痛いからだ、居た堪れないからじゃ、ない。

2限からで余裕のあるらしい相手はご丁寧に昼食の準備までして、絶対安静を言い渡し出掛けていった。
朝はトイレに立った流れで食卓に座ったものの、やはりまだ起き上がるにはしんどさが勝つ。
水分をベッドサイドに確保して布団へ潜り込み、目を閉じる。
ふわふわ、している。今日、倉間はこの部屋へ帰ってくるのだ。

夕方に帰宅し、昼食もとった後を確かめると、相手は満足げに頷いた。
既に食欲は回復しているが、お粥からいきなり戻すのも胃に悪いので雑炊だった。
醤油味がこんなに恋しく思えるのもなかなかない気がする。
体温計で微熱を確認すると頬をぺたりと触ってくる。視線が絡む。

「おかえり」
「え?あ、はい」
「おかえり」
「……ただいま」

きょとんとする答えに繰り返すと、仕方ないなの意を込めて相手が笑った。
頬の手に、自分のを重ねる。

「お前ちゃんと寝れてんの」
「ソファとタオルケットで」

会話の内容にあまり意味はない、それは向こうも分かっている。
ぎゅっと手を握った。視線を強める、相手の瞳が揺れた。
窺うように顔が寄せられ、合わせて頬から体温を離す。

「舌、入れないなら」
「ん」

許しを得て唇に触れた。久しい柔らかさに欲が募る。 吸うだけに留めて何度も交わし、口の端にも押し付けた。 少し色づいた目元がいとおしく、親指で撫でる。 強く吸い付かれて一瞬怯み、唇を開きかけ肩を掴んだ。 息を吐く倉間の視線が最高に辛い。

「たつから、まじで」
「!」

お互いに固まって赤くなる羽目になった。

そそくさと退散するのを恨めしく思いながら布団に倒れ込む。
こっちが無理な時に限って押してきかねないのは何とかならないのか。
また熱が上がった気がして、額に手を当てる。

「治んなきゃいいのに、なんて」

口の中で呟いた言葉は、あまりに馬鹿馬鹿しい。
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