エンカウントも実力のうち! 11


「ところで」
「ん」

越前宅へ向かう途中、思い出したように手塚が質問を寄越してきた。

「何を話してたんだ」
「気になる?」
「やけに跡部が疲れたような表情をしていたからな」

ふふり、からかいを含めてみせたが答える手塚の台詞には言外に何をしたんだ、というニュアンスが込められており、どれだけ自分は信用がないのかという気分になる。

「部長、俺が問題ばっか起こしてると思ってない?」
「概ね間違いでもないだろう」
「あっそ」

不満げに問いかけてみるも当然のごとく言ってくるので失礼極まりない。
やっぱむかつく、そう思った矢先、ぽんと背中を叩かれた。

「ほら、急ぐぞ。打つ時間が惜しい」
 
声に次いで、踏み出される相手の一歩。 

「……やる気満々じゃん」

早足になった手塚を追いかけるように並び、くいっと袖を引いて耳に囁く。

「部長と俺は相性がいいって話してたんだよ」

笑って言うと手塚は大きく瞬いて、次の瞬間、真面目な顔でのたまった。

「のろけてきたのか」
「アンタってほんと色々台無しだよね……」

言ってやりたい台詞は数あれど、口にできたのはそれひとつ。
ほだされているのかなんなのか、考えたらやっぱり負けの気がした。

まだ日は高い、楽しい休日は始まったばかりである。


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