こしかたゆくすえ 2


***


「祭囃子」

微かに聞こえてくる音を拾って総司が呟いた。そういえば、宿へ着いた時そのような話を聞いたかもしれない。
頭の中の地図を確認し、神社の位置を割り出した。足を伸ばすにはちょうど良いだろう。

「土方さん、お祭りです」
「そうだな」
「そこは、行くか?でしょ。気が利かないんだから」

形ばかり唇を尖らせる総司に口元で笑う。

「変わらないな、お前は」
「あー、また子供扱いした!そういう発言するのは年取った証拠ですよ」


***


薄闇のなか浮かぶ提灯は何とも幻想的だ。
足元を見てみれば、この地域は細工にも力を入れているらしく、道の両側へ並べられた行灯の模様はどれも美しい。
ゆっくりゆっくり歩みを進めるうち、傍らの総司がそっと視線を寄越す。受け止めて見つめ返せば、ぽつり。

「手、繋いでもいいですか」

予想外の申し出に瞬いた。
間を勘違いしたのか総司が目を逸らしたので遊んでいる手を握り混む。
ぱっと土方を見返す表情、そして繋がれた箇所を確かめる視線。

「こんなことでいいのか」
「土方さんてばポエムが趣味の癖に情緒がないよね」

眉尻が僅か上がるのに、零れ出る台詞は静かに響く。

「またくればいい」

今度瞬いたのは総司だった。

「ここに限らず、毎年お前とこうやって」

ぎゅっと手を握る力に土方の言葉が途切れる。見上げる総司の瞳が揺れた。

「こうやって、ずっと一緒に?」
「ああ」

繋げて呟く音へしっかりと答え、頷き返す。
花が綻んだよう微笑む総司と歩調を合わせ、祭囃子に耳をすませた。

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