こしかたゆくすえ 1


局長!ご馳走様です!そんな声が唱和して隊士たちが店を後にする。
当たり前のように財布を開く土方を見て、総司は呆れたように言った。

「もー、土方さんたらそんなとこより僕にお金使ってくださいよ」
「何を言ってるんだお前は」

会計前で渋面を作って止まる相手の脇から支払いかけた代金の半分を勝手に置く。
驚いているうちにさっさと店を出てしまえば、少し遅れて土方が慌てて追いかけてくる。
総司一人がねだるのと、隊士へのおごりは訳が違う。実質の稼ぎ頭が自分であることもよく分かっていた。
もっとも、近藤や土方のように大盤振る舞いする気はさらさらないけれど。

「今度、二人で食べるときはご馳走になります」

にこりと笑えば、土方は唸って頭を掻いた。
また無駄に考え込みそうな真面目さに微笑ましく寄り添ったところ、ぽつりと落ちる問い。

「何か欲しいんじゃないのか」
「え」

突然の甘やかしに思考も足も止まる。
何かやましいことでもあったのかとまじまじ見つめる総司の視線を受け止めて、土方が続ける。

「そろそろ誕生日だろう」

頭が真っ白になった。
確かに毎年祝ってもらってはいたけれど、それは近藤が言い出したというのも大きく、
まさか土方から告げられるとは思わなかったのだ。
完全なる予想外の褒美に、何か言わなければと口を動かす。

「土方さんが居てくれたら僕はそれで……」

零れ出た本音、そうじゃないと胸中で焦るも相手は大した突っ込みも入れず首を傾げた。

「行きたいところがあるのか」
「そうですね!」

もうよくわからない勢いのまま、温泉旅行が決まった。

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