陽射しのいい部屋 6


まどろみから浮上する意識、凭れかかる体温をぼんやりと感じて瞼を開けた。
何度か緩く瞬いて、隣へと視線を移す。静かな寝息、規則正しく聞こえるそれとふいに揺れる前髪。寝てる時まで無駄にイケメンな南沢さんはまだ寝ていた。俺が寄りかかった時は前傾だったのが、見事に自分に傾いでいる。些細なことが、嬉しい。鉄壁の城塞だと思っていた相手は門を開いた後、実に簡単に落ちた。というか、こっちが落としにかかられた、気もする。雨の日や疲れたときは眉を顰める時もあるけれど、基本的に俺といる時間は頭痛の兆しはない。病は気から、を体現されて喜んでいいやら恥ずかしいやら、とりあえず皺のない眉間に安堵した。起こさないように、頭に触れる。髪を滑る指が頬へ当たった。

「ん…」

やべ、と呟きかけてそれこそ完全に起きると唇に力を。どうやら杞憂で済んだものの、指に、というか体温に擦り寄られた。思わずびくりとする。甘える仕草に心臓が跳ねた。更に微かに笑う口元が卑怯に感じる。そうっと動いて頬へキスを。音もせず触れて、肩口に額を乗せた。

「倉間…?」

眠さの残る音に呼ばれて視線を上げる。薄く瞼を開いた南沢さんが何度か確かめるように俺を見つめる。

「いま何時」
「五時、くらいかと」
「ふは、寝すぎだろ普通に」
「この部屋日当たり良すぎんですよ」
「なんだそれ」

寝起き特有の気だるさでもって微笑むと軽口。二人ごと包むシーツを小さくつまみ、俺と見比べる。

「これ、ありがとな」
「いえ、一緒に寝てたし」

自然と身体を離しかけ、動いた腕に引き止められた。滑り落ちる布の音、肌寒さがくるかと思えば抱き締める温かさに相殺を食らう。満足げに擦り寄って、甘えた息を吐かないで欲しい。ここまで陥落できるなんて思わなかった。心を傾ける意味を真剣に噛み締めるこの頃だ。こっちの狼狽も露知らず、腕の力を強めながら一言。

「六時には出かけるから、あと少し」
「?」

意味が分からず目を合わせると、ちゅ、と触れる唇。少しだけ押し付けて、俺が反応できないうちに言葉を続けた。

「店、予約してる」
「うわあ」

そこまでガチで。つい微妙な声を上げると破顔する。まだ寝惚けの抜けない、いや、とっくに抜けてるけど甘さ全開の可能性も捨てきれない相手が笑う。

「祝うつったろ」
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