グランドフィナーレ


そう、いまこれこそが最終幕。
幕を下ろすのは彼であり私であり、世界の全てである。
踊りまわる演者は愉快、紡ぎだされる物語は喜劇。
だってそうだろう、これが喜劇でなければなにをもって喜劇とするのか。
悲劇だなんて思いもしない。 浮かびくるものは笑い、ただ笑い、それこそ嘲笑。
ああ、嘲笑などしたら喜劇には失礼であった。
ならば拍手を送ればいいか、ここまでの過程そして結果に対する最高の賛辞を。
果てしなく不愉快で反吐の出る物語はこうして終わりゆく。

月夜に花畑、まさに作り上げられた舞台ともいうべき場所に彼は降り立った。
誰もが息を呑む、光が当たる。彼は微笑んだ。
駆け寄る各々を目の端で捕らえ、その事実を受け留める。
私も笑った。

これぞ大団円と神が言うならば、なんて素晴らしい幕引き。 そもそも神など存在するのか。 もし居たとして、見守ることを是とし何の干渉もしないのであれば、 意味というものは有りはしない。
そのような考えを起こす者がいるからこそ、神という名の偶像があるのでは。 叶わないものを運命やら何やらのせいにし、希望に縋って祈ること。 遣る瀬無い気持ちをぶつける先としての必要性。
ならばそれに乗っ取って神にぶつけよう。
私はこんなものは望んでいない、むしろ初めて望んだものがあれだったというのに。
打ち砕かれた破片は鋭く、降り積もるたびに抉り取る。
なにを。心を?
そんなもの自分にあったろうか。

花びらが舞う、月夜に煌く幻想世界。
舞台で踊って朽ち果てて。 抜け殻でさえないこの身に残るもの。
ではその全てを捧げて言葉にしよう。
浮かべた表情は限りなく不確かな。 届く必要のない挨拶は闇に消える。
さあ踏み出せば今度こそ終焉。演じ終われば全て用済み。

「お帰りなさい、ルーク・フォン・ファブレ」

物語の幕が下りる。

2006.6.13

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