貼ってみよう


昼食後、ゴミをまとめていると何故か手塚部長が止まっていた。
今日は弁当がなかったので行きしなにコンビニで買い、さらに購買でもいくつか買った。栄養云々、言われても面倒だなんて考えたが様子がちょっと違う。 やけに真面目にパンの袋を眺めていたかと思えば、ぽつりと零す。

「母が好きでな、よく集めて皿などを貰っていた」
「ああ、うちの母さんもやってた。25点で1枚プレゼント、みたいな」

相手の発言に軽く頷く。春とか秋になると色んな会社がキャンペーンをやったりする。 台紙に点数分のシールを集めればいいだけ、とは言ってもこれがなかなか集まらない。 そのまま袋を捨てて怒られたこともあるので少し理不尽な思い出だ。

「半端な点数を合わせるのが難しくてな」
「0.5点とかあるもんね。あれちょっとずるいよね」

何の気なしに手元のシールをめくった指、今は台紙など持っていない。ふと思い立ち、相手の腕にぺたりと貼り付ける。 二の腕に張り付いたファンシーな色。

「部長、3点」
「こら」

すぐさま剥がして袋に戻された。これで床にそのまま捨てたりしないのが部長だなあ、とぼんやり思う。 案の定、一度剥がされたシールの接着力は大したことがなく、貼るのを諦めたのか袋の中に丸めて入れて落ち着いた。

「値段シールとかさ、貼って100円、とか言ったことない?」
「つい最近、菊丸がやってやり返されたのは見た覚えがある」

けらり、何気ない思い出話を振ってみたところ、とてもわかりやすい実例が返ってきた。ある意味期待を裏切らない先輩だ……誰にやって誰に返されたのかは聞かないでおくことにする。

「大体、1枚の点数が低すぎるだろう」

それで終わると思った話題はしかし、妙なひっかかりを覚えた部長のおかげで続いてしまった。
いや知らないよ、っていうか集める点数シールなんだから高い点数だったらすぐに溜まって業者的にも意味がない。 だがこの場合の部長の発言は人に貼るにしては点数が低いというよくわからない論点に基づいたものなんだろう。 頭の良い人の考えることはたまにわからない、むしろ手塚国光の思考回路がわからない。

「じゃあ何点ならいいわけ」
「そういう問題じゃない」

違うのかよ。

「100点とか書いて貼ったげようか?」
「趣旨がずれているぞ越前」

じゃあ評価を上げる方向でいこう、と提案したら真顔で返された。アンタが言うな。
そもそもこんなどうでもいいネタで論じ合う時点で馬鹿馬鹿しい、ちょっとした言葉遊びに走ってもいいじゃないか。 これだから頭の固い優等生は対応に困る。 そんな風に思ったところでちょいちょいと手招き、釣られて見上げれば引き寄せられる。
頬に当たる体温、感触。僅か力が抜けてへたりと手を突いた。

「今のは何点だ?」
「……――計測不能」

なんでこーゆーことサラッとするかな。
呟いたら、

「お前が可愛いからだ」

なんだそれ。

「手塚部長が壊れた」
「じゃあ責任を取るんだな」

え、二段攻撃?

戻る