アフターケア


激しい行為であればあるほど、落ち着いた土方の処置は丁寧だった。
総司とて半端な鍛え方をしている訳ではないから、普段使わぬ筋肉は酷使されたが休めば割とすぐ起き上がれる。
それはそもそもが無体など強いられていない証拠でもあるのだけれど、真面目を漆喰で塗り固めたようなこの男は余裕のなかった己を恥じるように優しく優しく総司へ触れる。
無骨な手が愛でてくれる幸せを噛み締めながら布団に落ち着くのがいつもの流れだ。

「また眉間に皺。固まっちゃいますよ」

両手を伸ばし、少し身体をずらして刻まれた溝の部分へ口付ける。
その動きさえだるい程度には疲れているけれど、すぐ腕の中へ引き戻されるのも心地いい。

「大人しくしろ」
「あ、なんか脅し文句みたいですね。何されちゃうんですか」
「総司」

布団の中での密やかな命令に笑いがこみ上げくすくすと零す。嗜める声は困惑が大きい。
ますます深くなりそうな皺へ今度は指を近付けてなぞる。

「もう、毎回悩んじゃってかーわいい」
「か、っ」

衝撃を受けて絶句した土方にいよいよ笑いがおさまらない。
そういうところこそが、可愛いのだけれど。

「だいたい、終わったあとにむっすりされると傷付きまーす」
「それは、いや、そういうつもりは」

わざとらしく突付いてみれば、あからさまに動揺しだす。
本当に総司には甘く、そしてちょろい。
むずむずする口を開いて更に意地悪く問う。

「じゃあ僕とするのやめますか?」
「断る」

嫌ですけど、と続けかけて遮る勢いに止められる。
今度は自身が固まる羽目になった総司へ土方がごく真剣に言葉を紡ぐ。

「お前をもっと大事に抱きたいだけだ」


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ゆうべはおたのしみでしたか


大好きな掌の感触が、覚醒を妨げてどのくらいか。
とろとろまどろんでいる意識の外で、土方が笑う気配を感じる
物凄く見たいが今の状態を崩すのも惜しい。
葛藤しているうちに撫でる手が止まり、さほど間も空かずに額へ温かいものが触れた。

「なんで口じゃないんですか」

離れるが早いが視界を開いて零れ出る文句。
するとそれを予期していたかのように土方の口元が緩んだ。

「やはりな」

再度優しく伸ばされた指が額を突付くようになぞる。
分かっていての行動だと思うと途端に不満が増す。

「最初から起きてたわけじゃありませんー」

唇を尖らせれば合わせて指先が乗り、悔し紛れに吸い付いてやる。
それさえも吐息で笑う土方は楽しそうだ。睨んだまま口を開け、第一間接へ柔らかく歯を立てた。

「そんなに口寂しいのか」

すっ、と細められた瞳へ淡い炎が宿る。瞬間的に背筋を駆け上がった感覚で力が抜け、土方の指は解放された。
歯型もつかぬまま、当然の如く頬へ触れて掌が視線を固定する。
開いた唇を閉じきる前に噛み付く勢いで重なった。


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