まどろむ


覚醒しきらない意識、心地良いまどろみに漬かること数秒。
そのままもう一度眠りそうな総司を引き戻したのは自分と異なる呼吸だった。
思わず目を開ければ飛び込んでくるのは土方の寝顔。
いつもデフォルトで寄った眉間の皺が消えており、その無防備な様をまじまじ見つめる。
初めてではないが、見れるのもそう頻繁ではない。
大概、自分より早く起きて活動を始めてしまうし、寝るのも総司のほうが早い。
疲労のピークで寝落ちした時とも違う、安らかな吐息はレアといえるだろう。
そろそろまともに働いてきた頭が二度寝へ誘った原因へ思い至る。
先ほどから気持ちよくて仕方がない、この布団だ。
久々の快晴、まさに洗濯日和とばかりシーツも揃えて干したのを取り込んだことまでは覚えている。 思いのほかふかふかの布団へふざけて飛び込んだ総司を呆れたように見やった土方だが、腕を引いたら珍しく一緒に転がってくれた。
干した意味がないだろう、なんて表面上はお説教が飛んだけれど、瞳は優しくて誘われるよう唇を寄せる。 お日さまの匂いに包まれて、土方の胸へ身を預けた。
どうやら、そこから二人ともども寝入ってしまったらしい。
傾いた太陽がカーテン越しに投げかけてくる光は橙色で、電気をつけなければ薄暗い。
そして今気付いたが、抱きしめてくれる腕はなかなかきっちりとホールドされており、動けば確実に起こす。 抜け出せないほど柔ではないが、せっかくの力加減は正直惜しい。
しかしこのまま次の朝までゆく訳にもいかず、とりあえず寝顔を堪能していたところ、相手の眉が動く。 ん、と漏れる息の後、ゆっくりと瞼が開いた。焦点は合っていないのでおそらく寝ぼけている。

「総司、」

寝起きの掠れた声で呼ばれて心臓が跳ねた。
既に密着したのを更に抱き寄せる仕草へ笑みが零れる。

「、ふふ。土方さん、寝ぐせ」

自由な片手で型のついてしまった髪を撫でる。
いつもきっちり、まるで隙などないように振舞う相手の日常を得られる幸福に重ねて笑いがこみ上げた。 すると、ふいに伸びてくる土方の指。瞬きする総司の前髪を掬い上げ、口付けが落ちる。

「お前もな」

緩く笑う土方の表情、まだ寝惚け半分だとしたら性質が悪すぎた。
頬が熱くなるのを感じつつ、唇を尖らせてねだる。

「髪じゃなくて、ちゃんとキスしてください」


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