茶番


久しぶりだとか煽られすぎただとか、言い訳を並べても盛った事実は拭えない。
懲りずに自己嫌悪の沼へ沈むたび、強制的に引き戻される。もちろん総司に。
行為自体を悔いている訳ではないのだが、それを告げても無駄らしい。

「土方さんは僕が喜んでるのに何が不服なんですか」

真正面から問われると厳しいものがある。むしろ葛藤の程を察した上での文句なのだから立派な攻撃だ。 そうじゃない、と言ったところで通じない。馬鹿馬鹿しい、を前提に責められては何の手立てもない。 沈黙したまま僅か身を引けば、拗ねた子供のような表情で擦り寄ってきた。無意識に動く己の両腕、胸に凭れ込む総司の自然な動き。馴染んだ体温が罠である。
思わず抱き締めてしまった土方の胸中を無視して、相手が唇を尖らせた。

「腕、回せないでしょ」

駄目出しにそっと腕の力を緩めると、満足げに抱き付く無邪気さ。
笑顔で伸び上がり、瞳を覗き込んでくる。

「もう、土方さんったら僕のこと愛してる」
「だから困ってるんだ」

溜息をつくなとばかり、塞がれた。


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