答えて応えて堪えて


似合うと思ったから買ってきた、そんな理由で渡した品物がたまにある。いわゆるプレゼントに当たるそれは見返りを期待したものではなく、だからと言って律儀な相手が貰いっぱなしになることもなかった。幾度か繰り返すうち、ふと思い付いた様子で問いかけてくる。

「なんか欲しいもんあります?」
「倉間」
「即答は大変ありがたいんですけど用意できるもんにしてください」
「出来るだろ、元手もなく」

舌打ちが鳴る。忌々しげな表情はとても贈り物をしようって態度じゃない。

「つーかさー、」

はあ、と溜め息。頭を掻く手。もはや見慣れた呆れのセオリー。特に気落ちもなく見つめていたところ、続いたのは罵倒にならず、

「もうアンタのだし」

つまらなさそうな視線と共に向けられた言葉は軽く胸を撃ち抜いた。
ゆっくりと顔を覆う、俯いていきながらなんとか口にする。

「ちょっとこっち来い」
「なんすか」

大して離れてもない倉間が近付いたのを抱き締める以外の選択肢は無意味。大人しく腕におさまった相手の肩へ額を乗せる。息を吸って吐き出した。

「そういうのさらっと言うのマジやめろ…」
「相変わらず簡単に照れますね」
「簡単じゃねぇよ」

一杯一杯な自分を笑う声に抗議をぶつける。黙った気配へフォローの必要を感じ、渋々顔を上げていく。
まだ引かない熱を晒しつつ、じっと覗き込む瞳に囁きかけた。

「お前にしか出来ない」

近い距離の頬が染まり、それでもまだ睨む倉間の唇が触れる。

「やっぱアンタばか」


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