そういえば満足かよ


さして長くもない間のあと、舌打ちでもせんばかりといった様子で倉間がぼやいた。

「俺さぁ、アンタのそういうとこほんっとムカつくんすよ」
「うん」
「肯定じゃなくて!」

返事に被るよう抗議が飛んだ。机があれば掌を叩きつけているだろう勢い。
とはいえ抱き締めたこの体勢では些か無理があり、その衝動をこちらの背中へ向けないよう祈るだけである。
髪へ顔を埋めて息を吸い込む。匂いに安心しながら腕の力を強めた。

「ムカついていいから」
「解決する気がねえ!」

どうやらご立腹のようなので一旦顔を見合わせる。
むっすりと引き結んだ唇に触れてしまいたいが自制して、今度は瞳を覗きこみ問いかけた。

「俺のこと嫌になる?」
「二回目っ」

べっちん。さして痛くもない平手もどきが頬を打つ、というか当たる。
そう、二度目だ。答えをもらえなかったので繰り返してみた。
触れたままの手を取って、再度おねだりを続行。

「くらま、なぁ、倉間」
「あぁー!もー!くそ!!」

甘える呼びかけを掻き消すみたいに倉間がわめく。
掌は見事振り払われた。

「嫌だったらとっくに投げ飛ばしてるっつのボケが!」

怒りの視線、染まった顔。彩る条件があまりに可愛くて頬が緩んだ。
叫びに任せた答えに満足したので今度はキスをねだることにする。


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