面倒な愛はおすきですか?


数えたら負けだ、と思うより何より多すぎてやってられない、が正しい感想である。
喧嘩は片方が噛み付くだけなら発生せず、つまり成立したからには双方の言い分があった。
大概において互いに発散してしまえば試合終了、意外と早くおさまる。
だがしかし、タイミングだったり機嫌だったりとにかく何かが惜しかった場合、冷戦のようにもなってしまう。意地の張り合いだから結局は折れるか耐えられなくなるのだけれど、長引くときはとことん長引く。
そうしていま現在、明らかなる不快オーラを撒き散らしながらも部屋に戻る訳でない相手をどうするか途方にくれている。

まともに会話しないでそろそろ一週間。確かに今回は長い。
他人事みたく回想してるが、倉間だって色んな意味で疲弊モードだ。
自分が怒りやすい自覚はあるけれど、それは向こうが故意にあるいは無意識に追い詰めてくるからであって、そうそう何もかも気に入らなかったりするのではない。
そのさじ加減を分かれとまではさすがに暴論だから言わないが、分かってるかのような態度を示してくるのが南沢だから困った。
受け入れる範囲が広いようで狭い相手は、時折わがままな子供レベルで無茶振りをする。
当然反発、そうして勃発。原因なんてきっと本当はどうでもいい、倉間が南沢を受け入れるかどうかを量っているのだ。
こうした時に、本当に?と訴える視線を幾度か見た。失礼な話すぎる。

ああ、またこうやって折れるのか、との気持ちを込めて机を叩く。
読書する形だけ、進んでいないページへ向けられていた視線が動いた。
ソファに腰掛ける相手へ進んでいって、本を取り上げる。
睨み合う、一秒。

「俺、アンタじゃないと意味ないって言いましたよね」

手首が掴まれ、バランスを崩す。本が床に投げ出される。
倒れこむ場所は柔らかく抱き留め、しっかりと抱え込まれた。

「もうひとこえ」

耳に届く、弱弱しい声音。鼻を鳴らす。

「ちゃんと好きだっつってんですよ、バカ」

強くなる腕の力に合わせて、体重をかけた。


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