きみの呼吸が欲しかった


肩を強く掴むのは解放の合図。
まだ少し堪能したい気持ちを抑え込んで、舌を擦りながら唇を離していく。
目の端に涙を滲ませて睨む様子は可愛い以外のなにものでもないけれど、口にしたら呼吸もままならない状態で罵ろうとするから胸に秘める。そうやって咳き込んだ前例もあるのに、どうしてそうも噛み付いてきたいのか。
自分の態度が問題だとかツッコミを頂いた覚えもうっすらある、しかし可愛いから仕方ない。
開き直りも今更な思考を繰り返すうち、息を整えた倉間が額を当てる。むしろぶつけたと表現したほうが正しかった。
ごつ、と僅かに響く音。若干の痛みを伴った行動は何かの抗議だろうか。

「い、つも、長い…!」

必死に紡いだ台詞は息継ぎというより恥じらいによって途切れがちだ。
赤い頬はキスの名残だけではなくて現在進行形の要素もあると見える。

「だって気持ちいから」
「は」

悪びれもなく切り返したところ、口を開いてぽかんと止まった。
次いでぶわっ、と更に顔を染め上げる。

「きもちく、ない?」

熱の篭もる頬を緩やかに撫でさすって瞳を覗く。ほんの少し震えた色は艶が混じった。
鼻先へ口付け、もう一度視線を合わす。
気がついたように逸らそうとしても、既に手遅れ。

「倉間、もっとくち、あけて」


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