不機嫌ワルツ


糖分過多の翌日はツケが回ってくるものだ。
いつにも増して眉間に皺を寄せてふてくされているのも照れ隠しの反動と思えば顔が緩むのも仕方ないわけで。
未だベッドから出てくる気配のない倉間へ近寄って覗き込む。予想通り、そっぽを向かれた。隙間から覗く肩のラインに目を細める。

「昨日あんなに愛したのに」
「だまれ」

低く斬り捨てる響きは苛立ちが含まれ、ますますこみ上げてくるのは愉悦に近い。
耳を隠す髪の毛を指で掬う。

「かーわいい」

歪む横顔に奥歯を噛んだな、と少しの思案。
こちらを向かないまま吐き捨ててくる。

「わかっててそーゆー言い方するとこがヤなんですよ」

うなじから髪を掻き上げて耳元へ唇を寄せた。

「ん、ごめん、かわいい」
「謝られた気ぃしねーな畜生!」

強くなった語尾に、ふは、と零れる笑い。
ベッドへ乗り上げ、布団ごと後ろから抱き締める。
少しだけ強張る身体を宥めて呼んだ。

「倉間」

息を飲む音。ゆっくり頭を撫でて待つ。

「……アンタそうやっていっつも」
「甘やかしてくれて嬉しい」
「〜〜〜〜っ」

拗ねた声に本音で応える。
耐え切れない様子で裏手が飛んだ、痛さは並以下。
べちん、と当たる皮膚は幾らか熱い。

「やだ、もうあんたやだ…」

真っ赤になってしまった倉間が目を閉じて頬をシーツへ擦り付けた。
からかったつもりがないとまでは言わないが、やりすぎた感は否めない。
耳元にもう一度囁きかける。

「ごめんな」

途端、跳ね除けられた力は強く、布団ごとの拘束も振り切って睨む視線がこちらを向いた。
要するに布団の中でなんとか身体を反転させた相手は仕舞いこんでいた両腕を伸ばし、首へ絡めて顔を寄せる。
僅かばかりの厚みで隔てられる倉間が一糸纏わぬことは確かめるまでもない。
染まった表情、浮かぶのは艶。瞳がねだるよう潤んだ。

「、あいして」

致命傷を受けて理性は消える。


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