同意


目が覚めての違和感、というか体温。
後ろから抱きすくめられているのも珍しくないのが癪に障る。

「起きてこうされてると結構辛いんですけど、身動きとか」

まだ満足に動かない感覚の八つ当たりで呟くとしれり、答えが届く。

「自力で抜けてんだろ、いつも」
「今日はいまさっき起きたんですよ」

イラついて言葉が僅かに揺れる。
そう、たいがい腕が絡みついていたりするので引き剥がして起きるしかなかった。
外そうとすると不満げに擦り寄る時なんかは蹴りたくもなる。

「離れたい?」
「うぜえ」

問う声はねっとりと。
見えなくてもどんなむかつく笑みをしているか分かるから腹が立つ。
反射的に顔を狙った。小気味良い音で当たった手の甲はしかし、生温かいものに舐められた。

「!」

ぞわぞわぞわっと走る悪寒。
舌を擦り付けた相手は猫撫で声で酔ったように囁く。

「まだ甘える」

ちゅっ、ちゅ、ちゅっ、わざと響かせるような捕らえた手へのキス。
感触に合わせて殴りたい気分がわきあがる。
そしてさらに、追加攻撃。

「すーき」
「しってますよ!!」

甘えきったそれを振り払うよう叫ぶ。
くっく、と喉で笑った犯人が、満足そうに身を寄せる。

「ふ、しあわせ」

密着度合いは高まって、鼓動さえも心地よく聞こえる錯覚。
重なるリズムに唇を引き結ぶこと数秒ほど。
嫌々ながら口にした。

「俺も」

ごくごく小さな呟きへ、こっち向いてと我侭が加わる。


戻る