的確


常に都合の良いように解釈して受け流すはずの相手が止まった時は、大抵ろくな事がない。
こんな状態だと、特に。

「お前、こーゆー時の『やだ』って割と期待入ってるだろ」
「!?」

いきなり飛ばされた攻撃は疑問形どころか確定の響きをもつ。
引き攣る倉間を余所に納得を込めてさらにもう一言。

「そんな風に受け取ろうとしてる自分が嫌ってとこか」

手が相手の腕を弾いた。無意識の力はそれなりに強く、掴まれた箇所から一旦離れる体温。
自由になった足を下ろし、奥歯を噛んで睨みつける。

「俺がわかってたら安心して反抗できるかと思って」

受け止めた瞳は凪いでいて、ひたすら自己完結な戯言を寄越す。
さらに視線を尖らせた先で平坦な音。

「何しても可愛いっていったろ」

顔の脇へ突く手のひら。太腿からなぞるもう片方の指は意味ありげに。
再度持ち上げようと動くのを、跳ね付ける事が出来なかった。
細まる瞳、笑みに変わる唇。次に紡がれるのは甘く甘く優しいもので。

「好きなだけ恥ずかしがっていいから」

中指が頬をくすぐる。

「全部見せろよ」

低く落ちた命令は網となって自分を捕らえた。


戻る