めでる ゲーム機の画面に落ちる自分以外の影、顔を上げる前に頭に手が乗せられた。 わしゃわしゃわしゃ、撫でる動き。 「なんか唐突に構いたくなった」 「宣言されてもされなくてもイラッとすんのはなんででしょうね」 「愛だろ」 「そういう愛でいいんですか」 「倉間なら何でも」 スイッチを動かしスリープモードへ、と同時に漏れ出る感想。 「へえ…」 「なんだそのうわって声」 「なんかそればっか言って飽きないのかと」 「ぜんぜん?」 「聞くなよ」 「お前に飽きるとか」 「はいもういいでーす」 心底どうでもいい気持ちを込めたはずが相手は全くめげなかった。 むしろ楽しんで言葉のやり取り、キャッチボールというよりドッジボール。 ぶち当たって外野に飛ばされればいいのに無理矢理受け止めて投げ返してくるから鬱陶しい。 お決まりの流れにいかせまいと声を大きめに出したところ、分かってたとでもいうように相手が笑う。 「照れる前に遮る防御だよなお前」 「うるせーだまれ」 「ほんとに飽きたら泣くくせに」 試すみたいな物言いが気に食わない。 伸ばされた手に噛み付いた。 「!」 「泣いたら慌てるくせに」 やっと目が合う、睨みつけると不満げな表情。 お互い無言、手に持つゲーム機を机に置いた。 「だから飽きねーし」 「泣かねーし」 「泣かせねぇよ」 「それ矛盾」 煽りの台詞に使っておいて、言外に込めると心なしか声を張り上げてきた。 「だから!飽きないからお前も泣かない、泣くな!」 「逆ギレかよ」 低く呟けば、やっぱり不機嫌。不満なのは自分だと返したい。 「じゃあお前が泣いたら俺も泣く」 きっぱり言い切ったその内容に、一瞬思考が停止した。 「意味が分かりません」 了解も取らずに近づく唇。少しだけ歯を立て、目を閉じる。 柔らかい感触を味わいながら、抱きしめる腕に身を任せた。 |