理由


「いや、そういうのいいんで」

いきなり提示された可能性へ瞬時に拒否反応を示す倉間。

「まんねりするかと」

こちらとしては至極真面目な選択肢として出しただけではあるが、視線から 「この変態マジいい加減にしろ」的な殺気を浴びるほどに感じるので 何もかもをそう受け取るもんじゃないと説明を試みる。

「普通に入れるだけじゃ満足できないとか言い出されたらヘコむしな」
「最悪の過程を妄想すんのほんとやめてくれませんか」

吐き捨てる口調、そして表情。
ちょっとそういうアイテムでも、と口にしただけでここまで蔑まれるのもどうなのか。
うんざりした様子、それすらも可愛く思えてくるのは簡単な理由。

「お前の暴言もバリエーション豊富だよな」
「はい?」
「殴るとか潰すとかひしゃげろとか」
「ひしゃげろはさすがにまだ言ってません」
「未来予定やめろ」

じゃれ合いも大概に、衣服をまとわない脚を持ち上げてふくらはぎに唇を寄せる。
吸い付いた肌の感触と、一瞬揺れる相手の瞳。

「そんなこといいながら俺に足を開いてくれるもんな?」

甘く色を乗せかけた視線が突き刺すようなものに瞬時に変わる、快感。
欲に濡れた声が掠れて響く。

「ほんとかわいいよ、くらま」



「つーかさあ、こっちは南沢さんってだけで十分なんですけど他の要素とか望んでねーよほんとふざけんなマジ」

疲れのせいで無言だと思っていたら突然長文の文句が飛び出した。
思考に届かず瞬く。横顔を見つめて停止したところ、ギッと怒りの篭もった視線が向けられる。

「アンタがくだんねー思考にいくなら俺視点でも考えてみろばか!!」

罵倒だった、連続しても罵倒だ。
しかし示す意味は答えであり、苛烈な瞳こそが何よりもの。
舌打ちと共に逸らされた顔へ自然と手が伸びる。

「倉間」
「なんだよ」
「かわいい」
「はあ?!」

不機嫌な応対は一つの単語で容易に膨れ上がった。
キレ気味の表情をこみ上げる愉悦で迎え撃つ。

「可愛い」

息を飲む音に満足し、シーツへ沈むよう肩を押す。


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