寝起き


眠さの残る頭で朝をぼんやりと認識する。無意識に腕を動かして、体温が思った位置にないことに気付く。瞼を開け、少し離れて寝息をこぼす倉間へ身体を寄せた。抱き締める温度に安堵が高まり、心なしか強くなる力。身じろぎと小さな声、起きたかもしれない。

「くらま」
「いやまあ倉間ですけど」

ツッコミに精彩が欠けている、寝惚けを確認してここぞとばかりに体温を堪能する。

「ん、」

額へ唇を当てると固まる身体。これは覚醒フラグ。もう一度抱き締め直して名前を呼んだ。

「くらま」

ぴく、と反応した倉間はおそるおそるといった様子でこちらを窺う。

「…寝ぼけてます?」
「いや?」

語尾を上げての返しは不満だったか口をつぐむ。疑問より、そうであって欲しいに近かった可能性もある。いつもは寝惚けにかこつけて、だの不満を言ってくる方向性が今日は使えないだけとも言う。別に狙ってる訳でもなく、常に望むままに動いているだけだ。

「おはよう」
「、はよ、ございます」

腕の中で朝から戸惑う相手に笑いかける。なんとかといった感じで返ってきた挨拶を聞いて頬をすり寄せた。


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