珍しい?


目が合った。むしろ重なるべくして重なったその視線。
理由は単に、相手が思いっきり見つめてくるのを仕方なく受け止めたからだ。

「甘えたいですか」
「甘えたいです」
「どうぞ」

え、の形で開いた唇に鼻を鳴らしたい気持ちになりながら読みかけの本を机に置いて、ついでに少しスペースも確保するため位置をずらして腕を広げてやる。
驚いた顔をしつつもいそいそと近づいてくるあたり、なんだかな、と思う。
ぽふ、なんて軽い音でもたれる相手。じんわりとかかる体重は甘えの証。

「今日は優しいな」
「まあたまには」

ありがたみのない会話をすれば、耳元で柔らかく笑う気配。

「うそ、いつもやさしい、しってる」
「…ばーか」

呼吸がほんの少し詰まった気がする。
完全に糖分しか含まない馬鹿者が抱きついたまま猫撫で声。

「なでて」

髪を引っ張らなかった自分を褒めて欲しい。

「………ほんとばか」

掻き混ぜるよう撫でたあと、一度だけ、ゆっくりと手を滑らせる。

「ふふ、しあわせ」

蕩けた音色に耐え切れず、やっぱり頭を叩いた。


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