面倒なところが


いつも『心底鬱陶しい』なんて顔をしながら、跳ね除けるに留まらず、手の甲をつねる、場合によっては噛むレベルで
歯向かってくる。その癖、ふと間が空いたりすれば途端に不安を覗かせるだなんて卑怯とかじゃなかった。
もちろん自粛したわけもなくタイミングやら重なった上での結果で。要するにたいした理由もないわけで。
しおらしい態度で裾を掴んでくる倉間に怒りを覚えるのも致し方ない。

「今日は、いいのかと思って」
「お前がなくていい日とかねーよ」

思わずマジレスをしたところ、一秒のち赤くなって固まった。

そんなことがあっての翌日。朝から夕方に至るまで、すげなくされることがない。
隙を見てのスキンシップは全て受け入れられ、後ろから抱き締めた現在は泳ぐ視線で俯く始末。
そこまで照れを持続させずとも、だの考えた直後、間違いと気付く。
抱く腕へ、そっと触れる相手の指。少し染まった頬と控えめな口元。
尾を引いて嬉しそうな様子に頭を殴られたような衝撃を受ける。

――かわっ…!

感情に任せて体勢をずらし頬へ口付けた。すぐさま振り向く形で倉間からのキス。
表情が緩む。

「かわいい、かわいい、かわいい」

逸らされてしまった視線に構わず頬を何度も擦り付ける。
やがて困惑したような声がぽつり。

「……ものずき」

往生際の悪い天邪鬼へもう一度唇を降らせ、頭を撫でた。

「俺にだけ可愛かったらいーんだよ」


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