明言


終わったあと、特に熱に浮かされてあれこれ口走りすぎた夜のあとほど上機嫌な相手がつくづく鬱陶しい。
起きて動けないのは半分自業自得でもあるけれど、気絶落ちからの寝覚めが優しげな眼差しだとか勘弁して欲しかった。
甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたおかげで身体は清められているし(自分が放心した場合は確実にそうなる)起き抜けに欲した渇きを見越したかのように水まで用意されて睨むしかない。だいいち、声も掠れて喋りづらいから文句を言う気力も早々消えた。
せめてもの反抗でシーツへ顔を押し付けてしばらく、自然に伸ばされた手が頭を撫でる。促すのではなく、あやすのでもなく、ただ愛しさだけを伝える動きで。ますます腹が立った。
首を動かして半分だけ顔を覗かせると目が合う。ふ、と笑う瞳は限りなく柔らかい。思わず舌打ち。
ぱちり、瞬いたのち吹き出す相手。

「お前だから嬉しいって理解してる?」
「バカにしてんすか」

上がる語尾に揶揄を感じて声が低くなる。
さすがの自分もこの状況で勘違いをかますつもりはない、どうしてもこう、苛立たしいだけだ。
また布へと逃げようとする前に落ちる声。

「分かってるならいい」

些かの違和感が判断を鈍らせた。言い聞かせるような響きはどちらにだろう、疑問に捕まってるうちに肩を押される。
簡単に仰向けにされて、見下ろしてくる顔は近い。

「お前にしかたたねーし」

右から左へ抜けた台詞がUターンして頭に舞い戻る。ぞくりと震えた。今更すぎるとも思うのに頬が熱い。
そう、こんなことくらいで今更照れるはずもないのに全身を羞恥が襲うのは寄越される光が獣じみているからだ。
揺れる瞳の色は陶然と、しかし絡め取られる強制力。

「俺の欲は全部おまえが受けるんだから」


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