いい加減にしろ


「ま、まってください!」

甘い雰囲気、逃げない身体。流れるように押し倒した自分に非はないはずだと南沢は思う。
シーツを背にした途端、慌てて制止を掛けられて驚かないのも無理がある。
よって、見下ろした状態のまま大人しく待つ姿勢を保つのは想定外だった。
勢いというものがあるのだ、冷静になると南沢だってそれなりに恥ずかしい。
かたく目を瞑った倉間は逆に誘っているようにも見えたし、間近で見ながら耐えるだけで重労働だ。
体感時間は10分以上、実際には5分以下。
静かにならざるを得ない空気で呼吸さえ気を使いながら見つめていると、やがて恐る恐る倉間が瞼を開く。
かっちり合わさった目線、きょとんとした瞳はみるみるうちに不機嫌に変わった。

「おいこら」
「なんすか」
「いやその方向性は俺の台詞だから」

理不尽も理不尽、お預けを食らわせといてその命令を聞いたことを非難するとは。
いい加減高ぶったあれこれを込めて、ばすん、と布団を叩きつける。

「待ったんだけど?」
「好きにすればいいじゃないですか」

低い声に被さる早口。逸らす目元はうっすら赤い。
喉を鳴らして顎を捕らえる。

「ちゃんと目ぇ見てねだれよ」


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