実施


目を見張った倉間が分かりやすく固まったあと、逃げもせずにこちらを見ては明後日のほうへ視線を向ける混乱を繰り返した。

「…驚きすぎだろ」
「や、でも、えっ、えっ?!」

若干の呆れも通じず、狼狽するしかないといった様子で相変わらず動けない、動かない。なんでこいつはイコールでの結び付きを想定せずにいようと思えたんだろうか。そこまでキョドられるとむしろ冷静になる。むしろ冷静に追い詰めたくなる。

「おまえ俺で興奮しないわけ」

つい、と指で顎をなぞると慌てて後ろへ下がろうと暴れる気配。

「いやいやいやいや!ちょ、たんま!たんま!」
「何が」

無意識に低い声が出る。瞬間、怯えた動揺が顔に広がるのに目を細めた。

「何がって、いや、」
「何を待てって?」
「あの」
「うん?」

寄っていくにつれて、近い近い近いです、とか言いながら目を逸らす。そりゃ近くしてんだ、お前が逃げるからな。
ベッドの端、壁に左手を突いて倉間がシーツを握る。促す視線のみを向けた。

「すげぇ……ぞくって、しました」

言い終えたその顔は音にした認識を経て火照って潤む。壁から引き剥がすように押し倒す。

「待たない」
「ぁ、」

触れたところがびくんと震え、征服欲が一気に頭を満たした。


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