両成敗


目は口ほどにものを言う、なんてのを体感するのはそれこそ何度か知れない。
分かりやすいくせにめんどくさいこいつは何度も何度も何度も何度も飽きもせず同じ問いを繰り返す。

――なんでおれのことすきなんですか。

直接言われた訳じゃない、聞かれたなら答えてる。
お前だからだと、何度だって答えを返す。
でも倉間は言わない、口にしない。まるで解決もしないから意味がないとでも確信してるようだ。

「南沢さん、」

なんで、なんで、なんで。瞳に浮かぶ疑問をそのままに返してやりたい。聞かれたら、何でそんなこと聞くんですかって顔するくせに。俺を信じないで自分だけ分かれと言うのはあまりに勝手じゃないのか。頬へ触れて体温を感じて見つめ合う、キスの直前の仕草でふつふつと怒りがわいてくる。我侭だ、傲慢だ、これだけ心を占めておいて。

「おまえなんでそんななの」

息のかかる間際、恨めしく言葉が落ちる。少しだけ目を見開いた倉間が分かりやすく不機嫌さを醸し出す。勢いよく掴まれる左肩。

「窺うように触るくせに」

は、と口の形は薄く開けども声が出ない。こいつは何を言っているのか、どれにかかっての、くせに、なのか。
分かっている、本当は言われた瞬間に分かっている。そんな不満も拗ねも何もかもを取っ払う術もきっと自分たちは理解してるはずだ。

「なんで一方通行でもないのに拗れてんだよ」
「知りませんよ」

触れていた頬をてのひらでさする。心なしか、先程より熱い。

「仲良くしたい」
「別に悪かねーだろ」
「仲良く、したい」
「…っ、」

今度こそ顔を寄せて、鼻先が当たる。息を詰めたような反応から、ゆっくりと閉じられる瞼。
了承の意を確認して口付けひとつ。肩を掴んでいた手が首へと回された。


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