たまには


後ろでソファに転がっていた気配が動いた。
これはくる、そう思ううちにのっそりと後ろから凭れてくる、重さ。
肩に額を当て、両腕で軽く囲う。抱き締めるまでしてこないのは甘えているからだ。
または床に座って机に向かう自分の体勢的にそれが精一杯という側面もある。
そのまま動かないので気にせず雑誌を捲ろうとするが、当たり前にやりづらい。
ふう、と息を吐いて雑誌を閉じる。相手が微かにぴくっとする。
囲った腕の外側から腕を伸ばし、顔を上げさせた。横向く頬を舌でべろりとなぞる。

「!?」

一瞬で見開いた相手の瞳を確認して顎を中指で押し、耳を口元へいざなう。
耳朶から窪みを辿り、穴の中へ。わざと水分を塗りつけるように音を立てて舐めた。
舌先をすぼめて思いきりねじ込むと支えに掴んだ肩が震える。
濡れそぼった場所へ吐息を吹き込むていで名前を呼ぶ。

「みなみさわ、さん」

物凄い勢いで机に肩が押し付けられた。
こちらを見てくる顔は割と必死である。

「顔、真っ赤ですよ」
「お前さあ、お前さあ、ほんとさあ」

ふ、と笑うと信じられないといった様子で困惑気味に繰り返す。
恥ずかしい悔しいだがしかしここで引くのはもっと嫌だ、言葉にするときっとそんな感じだ。
威嚇されるのもおつなものだな、そんなことを思いながら手のひらで頬を撫でさする。

「誘われてくれました?」


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