お大事に


ソファーにうつ伏せ、申し訳程度に掛けられた毛布は頼りない。
とりあえず落ちないように引っ張り上げて、顔側に視線が合うようしゃがみ込んだ。
帰ってくるなり倒れこんだその場所は、昼に自分が適当に寝た名残だったりする。
ベッドに行く余裕もないのかとしげしげ見つめた。
気分が悪いなら仰向けになればいいのに、と口にしかけてなんとなくやめる。

「大丈夫ですか」

そんなわけはなかった。しかし他にかける言葉も難しい。
返事にもならない唸るような音、本当に辛いようだ。
ふっ、と、好奇心がわいた。

「ちゅーしましょうか」
「後で頼む」

こういう返事だけは早い。なんだかわくわくしてきたので続けてみる。

「今がいいです」
「後で何回でもする」
「いま限定かつ一回」

前向きな答えに斬り捨て御免。一秒かそこらの間があって、
クッションに埋もれていた顔から恨めしげな視線がギロリと向く。
絞り出す声へ含まれる威圧、というか抗議。

「て、め…」
「南沢さん、好きです」

自然と口元が緩んで言葉が落ちた。相手が目を見開く、その瞬間の表情ったらなかった。
しゃがんだまま頭を撫でる。さらさらと指を滑る髪が気持ちいい。
笑いかけて重ねていく。

「好きですよ、好きです」
「だからなんでお前、こういう」

時だけ、と掠れる声。いよいよもって顔がほころぶ。

「俺、南沢さん大好きなんで」


戻る