仰せのままに


大丈夫、大丈夫、大丈夫。そうやって抱き締めてくる腕に声にますます涙が止まらない。

「俺がロマーノをめんどいとか思うわけないやろ?なんでそんな心配するん」

そんなことはわかってる、お前が俺を見捨てるわけない。でも、それでも最悪の想像が頭をよぎるのは疲れている時だ。ふいに恐ろしくなって息もできなくなる。スペインに呆れられたら、俺はどうなってしまうのか。

そうやって後ろ向きになった時だけスペインは本当に敏感で、何があったのかと問い詰める。
最初はなんでもないと抵抗するのにあれよあれよと聞き出して、ついに耐えられなくて泣いてしまう俺を抱きしめるのだ。 この涙は怖いからではない、簡単に毎度告げてしまう自分の弱さが悔しいだけ。そんな臆病な自分は捨ててしまいたいのに。

「そないに不安?信じられん?お前はどうしたら安心するんかな」

覗きこんで困ったように眉を下げる相手に胸が痛む。違う、悪いのはお前じゃないと口に出す前に真剣な顔でスペインが言った。

「寂しいって感じる暇もないくらい抱いたらええ?」

しゃくり上げる声が思わず止まる。呼吸さえ忘れた俺を置いてスペインはそれはもう真面目に俺に言い募る。

「五日、いや一週間くらい頑張れば休み作れるで。そんで目一杯愛したるわ、お前がもう嫌言うても離さへん。それくらいしたら分かってもらえるやろか」

え、あ、と言葉にならない音が口から零れる。遅れて内容を理解した頭が破裂しそうで頬に熱が集まった。

「あ、でもあかんなあ。それやとロマーノ、俺に惚れ直してますます心配してまうわー」

けろり、表情を戻して笑う様子に一気に力が抜ける。冷めない熱が顔を染めていてまともに相手を見ることができない、くそ。

「お前、どっからどこまでが本気なんだよ…」
「全部本気や」

やっと呟いた一言に思いのほか即答で返り、びっくりして顔を上げてしまった。あ、と思った時には待ってましたとばかりに顎を捕らえられ情熱的な瞳が俺を射抜く。

「俺の愛情、少しは伝わった?」

微笑むスペインに負けただなんて思うのは癪だったので頬に手を添えて見つめ返した。

「伝わったから、いま示せよ」


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