消去法


そもそも同じ男なんだから、役割を固定するというのが正直なところ気に食わない。
最初のとっかかりがあったとしても、矜持として曲げたくないものもあるのだから。

「えー無理」

しかし俺のその至極まっとうな意見は年中頭がお花畑のスペインに朗らかにかつあっさりと却下された。

「なんだよその即答は!」

まるで、今日の晩御飯の要望には応えられない、なんて状況が似合いそうな軽い返答に思わず噛み付く。
当然だ、こっちにもプライドとかそういうものがあってだな!
睨みつける俺は本気だというのに、当のスペインはまた、えー、と不満げな声を上げたかと思うとそのままの表情で非常にさらりと言ってのけた。

「だって俺、お前のこと可愛がって可愛がって可愛がって、俺が欲しくてしゃあない状態にして、縋りついて何度も何度も名前呼んでくるの見るんめっちゃ好きやし」

いま、なんてことないスピードでさくさく投げられたセリフの意味はなんだろうか。
理解が追いつく前に更にスペインは言い募る。

「俺、ロマのこと気持ち良くしとる自信あるもん」

すっぱり曇りのない目で言い放つこいつが最悪だ。
選択の余地なく最悪だ。
そして俺にどうしろと、どう反応しろと、何を言えと!

「俺は、お前の、そういうところが嫌いなんだよ!!」

足を踏み鳴らし叫ぶも動じない、掴みかかっても微笑むばかり。
逆上してかました頭突きも避けずに受けて、またスペインはへらへら笑う。やっぱ頭沸いてんぞこいつ。
本当にどうしてやろうかと睨みなおしたところ、穏やかでありながら妙に自信ありげな笑みを浮かべて嬉しそうに言った。

「じゃあ、他は好きなんやね」

途端に襲いくる羞恥と絶望感。言葉の裏を読むなんて高等技術、ありえない。
普段はそんな勘の良さなど発揮しないくせにポジティブだけが取り得のくせに!
ぐらり、よろけるように後ずさったのが運の尽きか、腕に囲われ捕らえられた。

「ほんま、ロマーノはかわええわぁ」

もう、何も言いたくない。


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